作品十句

2021.10

紙の質 中嶋憲武

  • ことば古ければ鶴来るためしあり
  • 水滴が足音となる月白だ
  • 月白を逸れ桃いろの足のうら
  • 晩秋の手相知らない紫雲の木
  • 口語訳の月夜へひらく紙の質
  • 機械冷す羽の止まつて小鳥来る
  • 童貞を捨てれば刈田広がる死
  • 落ちてきた天使を食べる秋の暮
  • 稲妻に文字追ふ闇の高架駅
  • 濡れてゐて月のほとりの茶葉ひらく

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紙の質    中嶋憲武

  • ことば古ければ鶴来るためしあり
  • 水滴が足音となる月白だ
  • 月白を逸れ桃いろの足のうら
  • 晩秋の手相知らない紫雲の木
  • 口語訳の月夜へひらく紙の質
  • 機械冷す羽の止まつて小鳥来る
  • 童貞を捨てれば刈田広がる死
  • 落ちてきた天使を食べる秋の暮
  • 稲妻に文字追ふ闇の高架駅
  • 濡れてゐて月のほとりの茶葉ひらく

二階山岸由佳

  • 蟋蟀の澄みカーテンの幾何模様
  • 小鳥来る指組む指のあたたかし
  • 柿の実の照り別々の傘のなか
  • 膝抱えながら読む本秋の山
  • 何時だらう二階の空の水木の実
  • 澄む水へ山鳩の脚消えゆける
  • 秋蝶の近づき尿る猫の貌
  • 夜空巨大鞄の中の冬めく手
  • 晩秋のみづたまりにこゑ燈の灯り
  • 一階のみづおと眠りつつ冬へ

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二階    山岸由佳

  • 蟋蟀の澄みカーテンの幾何模様
  • 小鳥来る指組む指のあたたかし
  • 柿の実の照り別々の傘のなか
  • 膝抱えながら読む本秋の山
  • 何時だらう二階の空の水木の実
  • 澄む水へ山鳩の脚消えゆける
  • 秋蝶の近づき尿る猫の貌
  • 夜空巨大鞄の中の冬めく手
  • 晩秋のみづたまりにこゑ燈の灯り
  • 一階のみづおと眠りつつ冬へ

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