作品十句

2021.11

手もなく 中嶋憲武

  • ラジオ体操のピアノ枯木を撫でてゆく
  • 冬蜂の手もなく水筒抜け落ちぬ
  • 膝に鈍き痛み木の葉の速度あり
  • 白鳥となり封緘の圧力の熱ぺたんぺたん
  • 断りつづく電話の声は霜夜に浮き
  • 北風の右手のうごき臍を愛す
  • 山襞に日を置き疎らなる短日
  • 顳顬に底冷の指先当てて喜劇
  • 空風の及ばず段ボールの平たき層
  • 冬霧へ犬鳴く音の戸のひらく

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手もなく    中嶋憲武

  • ラジオ体操のピアノ枯木を撫でてゆく
  • 冬蜂の手もなく水筒抜け落ちぬ
  • 膝に鈍き痛み木の葉の速度あり
  • 白鳥となり封緘の圧力の熱ぺたんぺたん
  • 断りつづく電話の声は霜夜に浮き
  • 北風の右手のうごき臍を愛す
  • 山襞に日を置き疎らなる短日
  • 顳顬に底冷の指先当てて喜劇
  • 空風の及ばず段ボールの平たき層
  • 冬霧へ犬鳴く音の戸のひらく

吉日山岸由佳

  • やはらかい椅子に沈んで冬の鳥
  • 冬林檎うすく皮剥くよるの音
  • 靴下を脱ぐ水鳥を片隅に
  • 逆さまの夢をみてゐる師走かな
  • バスへ朝日全身黒く着膨れて
  • 街の灯の粗く降誕祭前夜
  • すれちがふ冬わたしかも知れぬ人
  • ひとりづつ寒き影伸び晴れわたる
  • 吉日の白鳥ならば声あげよ
  • 耳に力冬夕焼に間に合ふか

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吉日    山岸由佳

  • やはらかい椅子に沈んで冬の鳥
  • 冬林檎うすく皮剥くよるの音
  • 靴下を脱ぐ水鳥を片隅に
  • 逆さまの夢をみてゐる師走かな
  • バスへ朝日全身黒く着膨れて
  • 街の灯の粗く降誕祭前夜
  • すれちがふ冬わたしかも知れぬ人
  • ひとりづつ寒き影伸び晴れわたる
  • 吉日の白鳥ならば声あげよ
  • 耳に力冬夕焼に間に合ふか

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