作品十句

2021.06

木口木版 中嶋憲武

  • 父の日の川に沿ひゆき偶に笑む
  • 父の日の通話の端に電車来る
  • 梅雨のグラスに鱗のごとく水の粒
  • 黄金虫橋まで何も知らされず
  • 老鶯や置き忘れ傘の吊るされて
  • 木口木版の漆黒止まず熱帯魚
  • スプーンの影あつさりと明急ぐ
  • 夏至の日のテレヴィジョンの武士は囁きぬ
  • 波となり身の滑りゆくかたつむり
  • かたつむり生まれ乍らに殻を持ち

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木口木版    中嶋憲武

  • 父の日の川に沿ひゆき偶に笑む
  • 父の日の通話の端に電車来る
  • 梅雨のグラスに鱗のごとく水の粒
  • 黄金虫橋まで何も知らされず
  • 老鶯や置き忘れ傘の吊るされて
  • 木口木版の漆黒止まず熱帯魚
  • スプーンの影あつさりと明急ぐ
  • 夏至の日のテレヴィジョンの武士は囁きぬ
  • 波となり身の滑りゆくかたつむり
  • かたつむり生まれ乍らに殻を持ち

ぽつとり山岸由佳

  • 壁に陽のあり紫陽花にはじまる日
  • 枇杷を剥く男の指の甘え雨
  • 眼のいろの蟻が花粉の奥走る
  • かはたれの雨もつれあふ蛾のけぶり
  • 孑孑に時計の針のだらりある
  • 桜桃忌傘に貼りつく葉の一枚
  • 短夜のこゑを出さずに笑ふ哉
  • 晴るる日の鈴を鳴らしてあめんばう
  • 凌霄花ぽつとり二人から一人
  • 藻の花のひらいて水を忘れゆく

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ぽつとり    山岸由佳

  • 壁に陽のあり紫陽花にはじまる日
  • 枇杷を剥く男の指の甘え雨
  • 眼のいろの蟻が花粉の奥走る
  • かはたれの雨もつれあふ蛾のけぶり
  • 孑孑に時計の針のだらりある
  • 桜桃忌傘に貼りつく葉の一枚
  • 短夜のこゑを出さずに笑ふ哉
  • 晴るる日の鈴を鳴らしてあめんばう
  • 凌霄花ぽつとり二人から一人
  • 藻の花のひらいて水を忘れゆく

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