作品十句

2021.05

とほき恋 中嶋憲武

  • 非常ベルときどき若葉あるところ
  • 十薬の真昼や声を押し殺す
  • 註解の長き詩編や夏蜜柑
  • とほき恋山繭いまもうすみどり
  • 曇天の微塵に蛇苺のおもて
  • ぼうふらの沈み鴉の耳澄ます
  • 追ひ越されゆく日傘の縁の波打てり
  • 携帯電話どきりと灯り梅雨の入
  • 空中都市虞美人草のうすくれなゐ
  • 駄犬噛みつく皐月貧しき男の脛

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とほき恋    中嶋憲武

  • 非常ベルときどき若葉あるところ
  • 十薬の真昼や声を押し殺す
  • 註解の長き詩編や夏蜜柑
  • とほき恋山繭いまもうすみどり
  • 曇天の微塵に蛇苺のおもて
  • ぼうふらの沈み鴉の耳澄ます
  • 追ひ越されゆく日傘の縁の波打てり
  • 携帯電話どきりと灯り梅雨の入
  • 空中都市虞美人草のうすくれなゐ
  • 駄犬噛みつく皐月貧しき男の脛

黄色い花山岸由佳

  • ハンカチの置かれし電車北は夜
  • 薔薇散らす風に吹かれてゐる犬も
  • 噴水や電話を切ればたちまち樹
  • 金鳳花ぜんぶ咲いたらふしあはせ
  • 夏雲のあはいところの喉かな
  • 蟻に指ちかづけ指輪鈍色に
  • 夏服の流るる樹々を微睡ぬ
  • 六月の寝言黄色い花のこと
  • 手が二つあり病葉の日向かな
  • 山法師ですか階段のぼりゆく

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黄色い花    山岸由佳

  • ハンカチの置かれし電車北は夜
  • 薔薇散らす風に吹かれてゐる犬も
  • 噴水や電話を切ればたちまち樹
  • 金鳳花ぜんぶ咲いたらふしあはせ
  • 夏雲のあはいところの喉かな
  • 蟻に指ちかづけ指輪鈍色に
  • 夏服の流るる樹々を微睡ぬ
  • 六月の寝言黄色い花のこと
  • 手が二つあり病葉の日向かな
  • 山法師ですか階段のぼりゆく

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